【平成30年度】FD実施報告書
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2. 総 括 専門外の学生に専門を教える―全学モジュール担当者にとって、自身が担当可能な専門分野の内容を、専門の異なる他学部生にいかにして教えるかは頭の悩ませどころであり、工夫のしどころでもある。本プログラムでは、全学モジュール科目を担当する3名の教員から、専門外の学生に教える際の工夫について紹介がなされ、その後、質疑応答と意見交換がなされた。 前村教授担当の全学モジュール科目「生活習慣病の予防」において、工夫の観点は、「興味を持たせること」と「興味を保つこと」である。前者における具体的な工夫は、生活習慣病を受講者自身の課題として認識させること、その達成のために受講者の今の食事や生活の振り返りと未来予想を課したことであった。また、後者では、視覚的資料を多用して受講者の記憶への定着を図るとともに、授業中の発問と調べ学習(アクティブ・ラーニング)によって授業への関心を維持した。 古本准教授による紹介は、外国人をはじめ多様な人との円滑なコミュニケーションに重要な“やさしい”日本語を扱う授業である。「興味を持たせる」ための工夫として、授業で例示する“やさしい”日本語が必要な場面を、受講者が所属する学部に応じて意図的に選択した。また、「理解を進める」ために、多数の場面を提示し、練習問題やインタビューによる“やさしい”日本語の実践を課した。提出物にコメントを付すフィードバックが、学生との関係性の構築、ひいては学修意欲と講義の理解を促すことは、専門が異なる学生でも同様であった。 庵谷准教授は、会計学を扱うモジュール科目「現代経済と企業活動」から報告した。身近とは言い難い会計を身近なものとして捉えさせた工夫は、架空の店舗を受講者が開いて損益運営計画を立てる、という状況を仮定し、模擬的な実践学習を課したことである。運営計画を発表する際は、プレゼンテーションのみを最終目標とせず、他の受講者からの出資獲得を目指すというゲーム的要素も併せ持たせることで、授業に対する受講者の興味を持続させることにも成功した。 講師による工夫は、いずれも具体的かつねらいが明確であり、参加者の今後の授業設計の参考となるものだったと思われる。受講者に興味を持たせるためには、受講者自身にも関係する課題として授業内容を認識させることが重要である。今回紹介された工夫の多くが、実用的あるいは身近な事項を授業の題材とすることでこれを達成するものだったことから、講演後には、抽象的概念を扱う授業における工夫について意見交換がなされた。また、汎用的技能の修得とともに、教養教育あるいは専門外の学生に対する授業において求めるべき学問的水準の設定に苦心しているとの意見も出された。 (文責:環境科学部 西山 雅也) 4

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